2021年09月03日 [長年日記]
_ [misc][底辺]デジタル庁
今週,デジタル庁なるものが発足した。なんかもう,名前からして終わってる。
東京都が渋谷で若者向けワクチン接種を行った。予約不要,先着順で接種できるという発想自体は悪くなかったが,用意されたワクチンは 300人分だった。早朝から行列ができ,受付を締め切った後も大混乱になった。想像力の欠如も甚だしいが,話はこれでは終わらなかった。
翌日は抽選券を配る方式に変えた。長さ 1km の行列が発生し,2226人に配って当選者は 354人だった。ハズレた人は,翌日また抽選で行列に参列するしかない。さすがに批判が噴出してオンライン抽選の検討に乗り出したが,まさにこれが日本の行政とデジタル化の実情だ。ツールはいくらでもあるのに,昔からのやり方を変えられない。
音であれ画像であれ映像であれ,自然界に存在するのはアナログ信号で,連続時間信号だ。それをサンプリング定理に基づいて離散化と量子化処理を行ったのがデジタル信号で,離散時間信号だ。離散化と量子化の処理を,デジタル化ということもある。記録されたデジタル信号は数字の羅列なんで,人が知覚するためにはアナログ信号に再変換する必要がある。再変換した結果と元のアナログ信号との区別ができないことを保証するのがサンプリング定理だ。
デジタル化は,学術的な裏付けに基づいた処理系が既に実装されている。そして,手段の 1つであって目的ではない。なのに,名前が「デジタル庁」だ。
オンラインミーティングが普及して移動の頻度が激減するこの時代に,トンネルを掘ってリニアを通そうとする。実体験には意味があるから,これはまだましだ。時の宰相である森元総理が IT革命を「イット革命」と読んだ。資源に乏しいこの国が,「座して死を待つよりは」とか言って先の大戦になだれ込んだ。航空機が戦況を左右する時代に大艦巨砲主義を貫いて戦艦大和や武蔵を建造した。遺跡を発掘したら,粘土板文書に「最近の若いモンは,,,」って書いてあった。
いつの時代も,人の本質は変わらないようだ。